【皮膚が赤い!体をかく!】感染症が原因かも?犬と猫の膿皮症・マラセチア皮膚炎・皮膚糸状菌について詳しく解説

や猫がしきりに体をかいて、夜も熟睡できていない...

ということはありませんか??

犬や猫がしきりに体をかいて、夜も熟睡できていない

 

もしかすると膿皮症・マラセチア皮膚炎・皮膚糸状菌といった皮膚感染症を引き起こしているかもしれません。

 

これらの病気は非常に発症率が高く、無治療で自然に治ることは、ほとんどありません。

 

ポイント

皮膚感染症は放っておくと、難治性になってしまうことがありますので、早めに治療を開始することが重要です。

 

 

膿皮症

皮症は、非常に高い頻度で発生する皮膚病です。

 

原因は主にブドウ球菌Staphylociccus pesudintermedius)と呼ばれる皮膚常在菌による皮膚の炎症です。稀に、緑膿菌などが原因となることもあります。

膿皮症の細菌

皮膚のバリア機能の異常を起こす基礎疾患(アレルギー性皮膚炎・脂漏症など)や

内分泌疾患(甲状腺機能低下症、クッシング症候群、糖尿病)がある場合、

ブドウ球菌が過剰に増殖してしまい、皮膚へ入り込んでしまいます。

 

その結果、膿皮症が発生してしまいます。

 

膿皮症は特に腋、頭部、鼠径、指間で発生します。

 

診断は、テープにより検体を採取し、顕微鏡により異常に増殖してしまった細菌や好中球を確認します。

上記の顕微鏡画像では球菌と呼ばれる膿皮症の原因菌を複数観察することができます。

また抗生剤に耐性を示す多剤耐性菌と呼ばれる細菌がいる場合には、細菌培養薬剤感受性検査を行い、どのような細菌がいて、どのような抗生剤が効くのかを外注検査します。

 

症状は、

赤み

・痒み

・フケ

・匂い

・痂皮(かさぶた)

・脱毛

などを引き起こします。

 

治療は、まず殺菌作用のあるシャンプー(クロルヘキシジン配合)を週に2ほど行い、1か月継続します。またシャンプーの際には薬剤成分をしっかり皮膚の深層まで浸透させるため、5-10分間浸漬することが重要です

 

広い範囲に病変がある場合には、抗生剤を使用することもあります。

抗生剤はセファロスポリン・クラブラン酸アモキシシリンを主に使用します。

難治性であれば、ホスホマイシンを使用する事があります。

 

また基礎疾患が存在する場合は、それに対する治療も並行して行います。

 

 

 

マラセチア皮膚炎

ラセチア皮膚炎は、皮膚に常在するマラセチアM.pachydermatis)が関連した皮膚病です。

マラセチアは、皮膚の常在菌で皮脂を栄養源として生活しています。

マラセチアは皮脂を栄養にしているため、皮脂が多い犬では過剰増殖し、皮膚炎を引き起こします。

マラセチアが増殖することで発生するマラセチア皮膚炎ですが、この病気も膿皮症と同様に基礎疾患が存在する場合に、多く発生します。

 

好発犬種

シーズー(特に多い)

・コッカー・スパニエル

・パグ

・ウエスティー

・キャバリア

です。

 

マラセチア診断には、皮膚でマラセチアが過剰に増殖しているかを顕微鏡で確認します。左の顕微鏡画像では、ヘチマのような形をしたマラセチアを複数観察することができます。

 

 

 

 

 

 

症状は、

首、脇、腋窩、鼠径などの皺に痒みを伴う赤み

・独特な匂い

・脂っぽいフケ

・脱毛

・皮膚の肥厚

・色素沈着

・苔癬化

などを認めます。また外耳炎の原因となることも多くあります。

 

 

治療皮脂の分泌が多い場合には、硫黄サリチル酸や過酸化ベンゾイルを含有するシャンプーで皮脂をしっかり落とします。

 

皮脂の分泌がそこまで多くない場合には、ミコナゾール・クロルヘキシジンを含有するシャンプー(商品名:マラセキュア、メディダームなど)を使用します。

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上記のシャンプー達は皮膚に乾燥を起こすことがあるので、シャンプー後の保湿をしっかり行う必要があります。

また、シャンプーができない場合はイトラコナゾール(抗真菌剤)5mg/kg1日1回で3-4週間投薬します。

 

 

 


 

膿皮症、マラセチア皮膚炎は他の動物にうつるの?

これらの皮膚病うつることはありません。ただし以下の感染症は他の動物種にうつることがありますので、注意しなければいけません。

 


 

皮膚糸状菌症

膚糸状菌は、犬猫の体表に感染する病原体であり、真菌(カビ)の一種です。

主にMicrosprum canisという真菌が原因となります。(他にはMicrosprum gypseum Trichophyton metagrophytes

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糸状菌は、ヒトを含む様々な動物種にも感染するため、人獣共通感染症としても問題となっています。

免疫力の低い若齢犬・猫や内分泌疾患・腫瘍性疾患などの基礎疾患が存在する場合に、発症することがあります。

 

はてな

人獣共通感染症は、ヒトとその他脊椎動物との間で感染を引き起こす感染症のことです。

近年、伴侶動物の増加に伴い、問題となっています。

主に幼児や高齢者が、犬や猫から感染し、リング状の皮疹が出ることがあります。

 

 

好発犬種

ヨークシャテリアが非常に発症しやすいです。

ヨークシャテリア

 

 

症状としては

・脱毛

・赤み

・フケ

・軽度の痒み

を伴います。

 

 

01d8bf5f-4f81-4ed1-905b-fddc2149f6a3診断には、ウッド灯(左画像)と呼ばれる機械を用いて、病変のある部位を照らし、緑色に変化することを確認します。

あるいは特殊な培地(DTM培地)で被毛を10-14日間培養し、糸状菌の増殖と培地が赤色に変化することを確認します。

 

 

 

治療は、全身に症状が及ぶ場合にはイトラコナゾール(抗真菌剤)を2-3カ月間使用します。

部分的に症状が及ぶ場合には、病変部の毛刈りをしっかり行い、クロトリマゾール、ミコナゾール、テルビナフィリンといった外用薬を1日2回塗布します。

 

また他の動物に感染することがないよう、部屋の掃除を徹底的に行い、場合によっては症例を隔離する必要があります