今現在飼育されている多くの犬猫は去勢・避妊手術が行われていますが、
去勢•避妊手術にはどのようなメリットがあるのでしょうか?またデメリットはあるのでしょうか?
去勢•避妊手術のメリット
①性ホルモンが原因となる病気の予防
②望まれない妊娠を防ぐ
③性ホルモンによって引き起こされる問題行動を防ぐ
が挙げられます。
① 性ホルモンが原因となる病気の予防
精巣から分泌される男性ホルモン、卵巣から分泌される女性ホルモンによって様々な病気が発生します。
オスの場合は前立腺肥大症、肛門周囲腺腫、会陰ヘルニア、前立腺肥大
メスの場合は子宮蓄膿症、乳腺腫瘍
といった病気が中高齢になって発症することがあります。これらの病気の中には命に関わるものもありますので、去勢•避妊手術は基本的に行うべきだと我々は考えています。
性ホルモンを分泌している生殖器(精巣•卵巣)を去勢•避妊手術により切除することで、これらの病気を予防することができます。
②望まれない妊娠を防ぐ
去勢•避妊手術をしていない場合、事故的に交配が行われてしまい、妊娠してしまうケースが意外に多いです。
このような望まれない妊娠を去勢•避妊手術により防ぐことができます。
③ 性ホルモンに関連する問題行動を防ぐ
性ホルモンによって様々な問題行動(特に猫)が引き起こされます。
例えば
•尿マーキング
•脱走
•凶暴になる
•マウンティング
•発情により大きな声で鳴く
適切な時期に去勢•避妊手術を行うことで、これらの行動を防ぐことが可能です。
去勢•避妊手術のデメリット
去勢•避妊手術はメリットが非常に多いですが、デメリットもあります。デメリットは以下の通りです。
①肥満
②尿を漏らす(失禁)
①肥満
去勢•避妊手術 による1番のデメリットは肥満でしょう。
手術を行う事で代謝が落ちてしまいますので、今までと同じ食事量を与えてしまうと肥満になってしまいます。
手術後は去勢•避妊手術後用のフードに切り替えるなどして、肥満を予防する事が重要です。
②尿失禁
避妊したメス犬では尿失禁を引き起こすことがあります。(オス犬でも稀に起こる事があると報告させています)
症状としては寝ている時に寝ションをしてしまいます、起きている時は失禁しないことが特徴です。
原因は女性ホルモンが分泌されなくなった事により尿をせき止めている尿道括約筋の機能が落ちてしまうことが考えられています。
尿失禁は基本的に大型犬で起こりますので、日本のように小型犬の多い場合は発生頻度が極めて低いです。
去勢•避妊手術の適切な時期は?
生後6ヶ月齢以降で行うと良いでしょう。
ただし、メスの場合は無発情期に実施する事が好ましいです。というのも発情期は卵巣〜子宮周囲の血管が太く、出血のリスクが高いためです。
オス猫ではマーキングなど発情行動の兆候が認められた場合、6ヶ月齢よりも前に去勢手術を実施することもあります。
避妊手術の術式について(卵巣摘出術vs子宮卵巣摘出術)
当院においては海外で一般的な卵巣摘出術(卵巣のみを切除する手術)を実施しております。
というのも卵巣摘出術と子宮卵巣摘出術(子宮と卵巣の両方切除する手術)は避妊手術の効果が一緒であり、
卵巣摘出術では
•お腹の傷口が小さい
•手術時間は30分〜1時間程度であり、麻酔時間が短くて済む
などといったメリットがあります。
ただし、子宮にポリープや腫瘍、子宮水腫、子宮蓄膿症を疑う所見があった場合は、子宮卵巣摘出術を実施します。