フィラリア予防について

フィラリア予防をもう一度おさらいしよう!

「もうすぐ春になるけど、そろそろフィラリアの予防を始めなきゃ!」という時期になりましたね! 新型コロナウイルスが問題になっているように、近年、温暖化の影響でどうぶつの感染症の発生も多くなってきています。

時期的にも最近はフィラリア予防や検査についての相談が多く、「フィラリアの検査って必要ですか?」「予防薬はいつから始めればいいですか?」といった質問をよく頂きます。

そこで、今回はフィラリア症(犬糸状虫)という病気をおさらいして、適切な予防方法と予防薬について学んでいきましょう!

 

フィラリアって何のムシ? 寄生するとどうなるの??

フィラリアは線虫という寄生虫に分類され、蚊の体内で成長し、犬に吸血した際にフィラリアの幼虫が体内に入って感染します。幼虫は犬の体内でさらに成長し、未成熟虫となって心臓の肺動脈に住み着いて成虫となります。

フィラリアが寄生した肺動脈は数日で傷害を受け、血栓ができたり、虫体が詰まったりすることで肺血管の血圧が上昇します(肺高血圧症)。その結果、心臓に負担がかかり、運動時の呼吸困難、疲れやすい、失神、発咳、喀血といった症状が現れます。

成虫が寄生してしまうと、治療が難しくなってしまい、亡くなってしまうことが多いです。

 

フィラリアの検査って毎年必要なの? どんな検査をするの?

毎年、フィラリアの予防を始める前にフィラリアの検査が必要です。

なぜ、検査が必要かというと、成虫が寄生しているとミクロフィラリアという幼虫を産み出すのですが、予防薬でミクロフィラリアを駆虫してしまうと、アレルギー反応を起こし、重篤なアナフィラキシーショックが現れてしまうことがあります。

それを防ぐために、まず、検査でフィラリアの成虫が感染していないかどうかを確認する必要があります。検査で陰性であれば、予防薬を開始することができます。

フィラリアの検査は2種類あります。

 

フィラリア抗原検査

 多くの動物病院で使われている検査方法で、フィラリア感染の有無を高い精度で判別できます。しかし、「幼虫が感染して180日以降でないと検出ができない」、「メス成虫の抗原を検出しているので、オス成虫単体の感染だと検出ができない」といった欠点があります。

 

ミクロフィラリア検査

 血液中のミクロフィラリアを検出することで、成虫の寄生を証明する検査です。

ミクロフィラリアの検査は様々ありますが、血液を1滴ガラスに垂らして顕微鏡でみる方法(血液塗抹検査)がよく行われています。

しかし、ミクロフィラリアの検出感度は比較的低く、少数の感染や感染犬に予防薬がすでに投与されている場合は検出できないことがあります。

また、ミクロフィラリアは夜間に血液中に出現しやすいことも検出できない原因の1つになります。

 

「フィラリア予防薬ってどれを選べばいいの…」 そんなあなたに予防薬を徹底解説!

・予防薬のしくみ

予防薬は月1回投薬するものがほとんどですが、ノミ・ダニ予防薬と異なる作用機序でフィラリアを駆虫します。

フィラリア予防薬は「予防」というよりもむしろ「駆虫」というイメージが強いです。

蚊から犬の体内に侵入したフィラリア幼虫は45~65日で未成熟虫になり駆虫薬が効かなくなってしまう可能性があるので、少なくとも45日以内には予防薬を投薬する必要があります。

そのため、フィラリアの予防は「30日」つまり、月1回行えば安心できるというわけです。予防期間は地域で少し異なりますが、関東地域では4月上旬から12月上旬までが目安です。

 

・予防薬の選び方

 ジャーキータイプとスポットオンタイプ、フィラリアのみやお腹の寄生虫も予防できるものなど様々あります。それぞれ特徴があるので詳しく解説します。

 ジャーキータイプ:牛肉風味の経口剤で、投与後すぐにシャンプーが可能です。大豆から作られていることが多いので、大豆アレルギーのある子は注意が必要です。また、食べて2時間以内に吐いたり、半分しか食べなかったり、口の中に隠してどこかに捨てていたり…というように、すべて食べないと効果がありません。

 スポットオンタイプ:首筋に垂らす液剤で確実に投与できるのが利点です。アルコール製剤なので皮膚の弱い子やニオイに敏感で吐いてしまう子は注意が必要です。また、投与後はシャンプーに入れず、1日待つ必要があります。

 

 ジャーキータイプとスポットオンタイプの特徴をおさえたうえで、各予防薬を解説していきます。

 

・ネクスガードスペクトラ

 フィラリア、ノミ・ダニ、お腹の寄生虫まで予防できるオールインワンのジャーキータイプ。予防できる寄生虫はフィラリア、ノミ、マダニ、犬回虫、犬小回虫、犬鉤虫、犬鞭虫になります。1種類で済むので投薬がラク、お腹の寄生虫も予防できる、食いつきが良いといった点が好評です。欠点は大豆アレルギーのある子は使えない、1錠すべて食べる必要がある、価格が少し高いといったところでしょうか。

 

・インターセプター

 フィラリアとお腹の寄生虫を予防できるジャーキータイプの予防薬です。予防できる寄生虫はフィラリア、犬回虫、犬鉤虫、犬鞭虫、瓜実条虫、多包条虫(エキノコックス)で、ノミ・ダニ予防薬と一緒に投薬することが多いです。予防できる範囲が幅広いのが特徴で、予防を完璧にしたい方にオススメです。また、蚊のいない冬の期間は投薬をストップして、ノミ・ダニ予防薬だけにすることもできます。欠点はノミ・ダニ予防も行うと2種類になってしまい投薬が大変になる、鶏肉アレルギーのある子は使えない、少し硬いので食べづらいといった点です。

 

・レボリューション

よく使われているスポットオンタイプの予防薬です。フィラリア、ノミ、犬回虫、ミミヒゼンダニを予防できます。比較的みられる寄生虫を一通り予防でき、確実に投与できます。欠点は近年問題となっている感染症を媒介するマダニは予防できない、皮膚の弱い子やアルコールの臭いに敏感な子は使えない、シャンプーは投与後すぐにできない(2時間後ならOK)といった点です。

ネコのフィラリア予防って必要?

 ネコはフィラリア感染に抵抗性があるため、感染率はイヌよりも低いですが、感染してしまうと無症状から呼吸困難まで様々な症状を呈します。

また、フィラリアの診断はイヌよりも難しく、治療もフィラリア成虫を駆除すると死に至ることが多いので、症状を緩和する対症療法しかできないことが多いです。

したがって、フィラリアに感染してしまうと診断と治療が困難なことから、フィラリアの予防はイヌ以上に重要です。

 

今回の記事でフィラリア予防がどれだけ重要なのかを学んでいただけたと思います。

フィラリア予防も忘れずに!