予防接種

 

狂犬病ワクチンのQ&A
● 狂犬病ってどんな病気なの?
狂犬病は狂犬ウイルスに感染した犬に咬まれることで感染することが多いので狂「犬」病と呼ばれていますが、人を含めたすべての哺乳類に感染します。発症すると治療法はなく、様々な神経症状が起こり短期間のうちに必ず死亡します。世界で最も危険な感染症です。

● 狂犬病ってまだ存在するの?
狂犬病は現在でも世界で毎年約55,000人もの死者を出しています。世界でも日本のように狂犬病を撲滅した国はかなり珍しく、イギリス、オーストラリアなどの一部の国だけです。
日本でも狂犬病予防法が制定される1950年よりも前は多くの犬が狂犬病を発症し、ヒトも狂犬病に感染して死亡していました。狂犬病予防法ができ、犬の登録・予防注射が徹底されるようになってやっと狂犬病を撲滅することができました。

● 狂犬病ワクチンって本当に必要なの?
現在は海外からたくさんの動物が輸入されています。2006年、フィリピンへの日本人観光客が現地で感染し帰国後発症したことからも、狂犬病発生地域からの人やペットの往来が活発な今、いつ狂犬病が日本で発生してもおかしくない状況です。
このような状況から、『狂犬病予防法』 という法律で狂犬病ワクチンを1年に1度全てのワンちゃんに接種することが国によって義務づけられているのです。狂犬病ワクチンの接種を受け、狂犬病を予防することは社会の安全を守るために極めて重要です。
高齢であることや病気にかかっていることなどは基本的にワクチン接種が免除される理由にはならず、接種の猶予をもらうには我々動物病院ではなく最終的に国の判断が必要です。今までに副作用歴のあるワンちゃんも副作用が発症しにくいようにお薬を投与してからワクチンを接種するなどの方法があります。

● 狂犬病ワクチンって猫には必要ないの?
猫は狂犬病に感染しますが、一般的に狂犬病を蔓延させる動物とは考えられていません。日本において猫に狂犬病ワクチンを接種する必要はありません。
ただし、狂犬病が蔓延する一部の国では猫も狂犬病ワクチンの接種を受けています。

● 狂犬病ワクチンって安全なの?
現在日本で使用されている狂犬病ワクチンは混合ワクチンに比べてさらにワンちゃんに対する安全性が高いと言われています(混合ワクチンのページ参照?リンク?)。日本で扱っている狂犬病ワクチン製剤は感染力の全くない不活化ワクチンであり、接種によって感染する可能性は絶対にありません。また、免疫賦活剤を含まないため重篤な副作用の発症リスクもほとんどありません。狂犬病ワクチン接種によるワンちゃんの負担は最小限であると言えます。
ただし、副作用の発症リスクを少しでも避けるため、混合ワクチンとは別の日に接種することをお勧めしています。

● 狂犬病予防接種スケジュールと費用
狂犬病予防法では毎年3月2日から6月30日までの期間内に狂犬病ワクチンの接種を行なうことが義務づけられています。ただしワンちゃんが生まれた初年度は3回目の混合ワクチンを終えて約 1ヶ月後に接種する必要があります。
初めての狂犬病予防注射を接種した後、役所への登録をしなければなりません。登録が完了すると鑑札・犬がいますシール・注射済票が横浜市から発行されます。この手続きは当院で代行させていただくこともできますのでお気軽にご依頼ください。
狂犬病予防注射をしたことがある場合、毎年春に市から狂犬病予防接種を呼びかけるハガキがご自宅に届くはずです。そのハガキと、前の年のプレートが入れてあった緑色の小さい封筒をお持ちください。狂犬病予防注射を接種した後は役所への更新手続きをしなければなりません。手続きが完了すると最新の注射済票が横浜市から発行されます。この手続きは当院で代行させていただくこともできますのでお気軽にご依頼ください。
費用は、診察料のほかに以下の通りです(全て税別)。
狂犬病予防接種
3,000円
横浜市への登録料(鑑札の発行)
3,000円
横浜市への注射済票交付手数料(当院で手続きを代行する場合)
550円

● 参考URL
厚生労働省HP 狂犬病
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/
狂犬病ワクチンに対するWHOの見解
https://www.who.int/wer/2010/wer8532.pdf?ua=1
WSAVA 犬と猫のワクチンガイドライン
https://wsava.org/wp-content/uploads/2020/01/Vaccination-Guidelines-2015-Japanese.pdf

混合ワクチンのQ&A
● そもそもワクチンって何のために打つの?
一度かかったことのある感染症に対しては身体に免疫が備わり、基本的には再度感染しても重症化しにくいです。この原理を利用して、弱毒化もしくは不活性化させた病原体をワクチンとして身体に接種することで、本来感染すると致命的な感染症などに対しても効率良い防御免疫を備えることができます。
特に幼い動物や年老いた動物では抵抗力が低いため、適切なワクチン接種で効率よく健康を守ってあげることがより重要になります。

● 狂犬病ワクチンと混合ワクチンって別物なの?
別物です!
狂犬病ワクチンの目的は、犬自体の感染予防ももちろんですが主な目的は人間社会への蔓延防止のために接種するものです(詳しくは別ページリンク)。混合ワクチンは複数の重要な感染症からワンちゃんやネコちゃんの健康を守るために接種します。
このような理由から、狂犬病は日本に現在存在しないものの狂犬病ワクチンの接種が法律で義務付けられており、混合ワクチンの接種はあくまでオーナー様個人の判断に委ねられています。
混合ワクチンは致死率や伝染力の非常に高い重要な感染症を効率よく予防できるため、適切な混合ワクチンの接種は健康を守る上でとても大切です。また、多くのワンちゃん、ネコちゃんが予防することで重要な感染症の蔓延防止にもつながります。

● 具体的にどんな感染症が予防できるの?
当院で扱っている混合ワクチンで予防できる感染症について表にまとめました。ワンちゃんとネコちゃんで内容は異なります。
【犬の場合】
病名(何種混合ワクチンに含まれるか)  主な症状・特徴
犬パルボウィルス感染症
(2種、5種~8種混合)
激しい下痢、血便、嘔吐、食欲不振、急激な衰弱。感染犬の便からの伝染力が強い。死亡率が非常に高い。
犬ジステンパー
(2種、5種~8種混合)
発熱、鼻炎、結膜炎、下痢、嘔吐、神経のマヒ。死亡率が非常に高い。
犬伝染性肝炎
犬伝染性肝炎
(5種~8種混合)
腹痛、下痢、嘔吐、食欲不振。子犬の突然死の原因となる。
犬伝染性喉頭気管炎
(5種~8種混合)
発熱、食欲不振、くしゃみ、鼻水、咳。他の病原体と混合感染することで重症化。
犬パラインフルエンザウイルス感染症
(5種~8種混合)
鼻水、咳などの風邪症状。他の病原体と混合感染することで重症化。伝染力が非常に強い。
犬コロナウイルス感染症
(6種、8種混合)
軽度の胃腸炎。子犬の場合、犬パルボウイルスとの混合感染で重篤化。
レプトスピラ感染症
(単体、7種、8種混合)
腎炎、尿毒症、黄疸。人にも感染する危険性。
特に西日本に多く、水場を通してネズミから感染する。
何種混合ワクチンが適しているかはそのワンちゃんの生活環境によって違います。一般的に種類が多いほどわずかに副作用の可能性が上がると言われており、むやみに一番多いものを選択することが正しいわけではありません。何種混合のワクチンを選ぶべきか、当院診察時に獣医師と十分にご相談ください。

【猫の場合】
病名                  主な症状と特徴
猫ウイルス性鼻気管炎
(猫ヘルペスウイルス感染症)
激しいくしゃみ、咳、鼻炎、発熱などの風邪様症状、角膜炎、結膜炎。発生率が高く、子猫では症状が激しく死亡率も高い。
猫カリシウイルス感染症
くしゃみ、鼻水、発熱など風邪様症状、口内炎。
猫汎白血球減少症
(猫パルボウイルス感染症)
元気消失、食欲不振、高熱、嘔吐・下痢、脱水。進行が早く、子猫では死亡率が非常に高い。
当院で基本的に扱っている猫用ワクチンは上記3つを全て含む3種混合ワクチンのみです。当院の3種混合ワクチンは注射部位肉腫が起こりにくいとされているアジュバントフリーのものです。
その他に、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスに対するワクチンも存在しますが、一般的な屋内飼育環境で生活する猫に推奨されるワクチンではありません。詳しくは当院診察時に獣医師とご相談ください。

 

● ワクチンってどんなタイミングで打たないといけないの?
ワクチンによって誘導される免疫力は月日の経過とともに徐々に低下していきます。有効な防御免疫を維持するためには定期的に追加でワクチンを接種する必要があります。
また、幼犬・幼猫は自己の免疫力が十分備わっていないため、初乳を通して母体から免疫力を受け継ぎます。この母体から受け継いだ免疫力は、徐々に低下していくものの低下する時期は個体差がかなり大きく、さらにワクチンの免疫誘導効果を著しく妨げます。つまり、幼少期のワクチン接種は必要性が極めて高いものの、接種の適切なタイミングは非常に難しいです。当院では世界的に取り決めらえたワクチンガイドラインに従い、出生後6~8週齢で接種を開始し、16週齢以降まで4週毎に計3回以上接種を繰り返すことをお勧めしています。
犬と猫それぞれでワクチンを接種すべきタイミングを表に簡略的にまとめました。
【犬の場合】
生後約2ヶ月
初回の混合ワクチン
生後約3ヶ月
2回目の混合ワクチン
生後約4ヶ月
3回目の混合ワクチン
生後約5ヶ月
狂犬病ワクチン
それ以降1年ごと
混合ワクチン
3回目の混合ワクチンから2週間経ったら、お外の散歩に連れ行くことができます。生後3ヶ月までの社会化期と言われる期間に他の犬や人間と接触することで友好的になると言われています。それでも、ワクチンが完了するまでは健康で完全なワクチン接種を受けている犬との交流に留めましょう。
トリミングサロンやペットホテルに提示する必要がある「ワクチン接種証明書」の有効期限は1年間です。しかしながら、2年目の混合ワクチン接種以降、一部の感染症に対しては免疫力が1年より長く持続することがわかってきました。お外に預ける予定がなく、ワクチンアレルギーが心配なワンちゃんでは事前に血液検査で「ワクチン抗体価」を測定することで不要なワクチン接種を避けることができる場合があります。詳しくは当院診察時に獣医師までご相談ください。
初年度以降の狂犬病ワクチンは、狂犬病予防法で毎年3月2日から6月30日までの期間内に接種を行なうことが義務づけられています。

【猫の場合】
生後約2ヶ月
初回の混合ワクチン
生後約3ヶ月
2回目の混合ワクチン
生後約4ヶ月
3回目の混合ワクチン
1年後
混合ワクチン
その後
飼育環境などに応じて1年もしくは3年毎に混合ワクチン
「ワクチン接種証明書」の有効期限は1年間です。しかしながら、2年目の混合ワクチン接種以降、特に猫汎白血球減少症に対しては3年以上有効な免疫が持続することがわかってきました。当院では不要なワクチン接種を減らすためにも感染症リスクが低い猫では3年に1回のワクチン接種をお勧めしています。
リスクが低い猫とは室内で1頭飼いされており、ペットホテルなどを利用しない猫です。リスクが高い猫とは定期的にペットホテルを利用する、または多頭飼育で室内と屋外を行き来する猫などです。
● ワクチンの副作用ってどんなもの?もし起こったらどうしたらいいの?
ワクチンによって多少の違いはありますが、ワクチンによってアレルギーのような副作用が出る可能性は0.01%程度と非常に低い確率です。ただし、副作用の可能性はゼロではないので、ご家族もアレルギーについて正しく理解しておくことが重要です。
ワクチンによるアレルギーは大きく2つの症状に分かれます。1つは命の危険性もある アナフィラキシーショック、もう1つは顔がはれてしまうような軽度なアレルギー症状です。
アナフィラキシーショックはワクチンを打った直後に起こる症状です。呼吸や心臓が急に止まってしまったり、意識を失って倒れてしまったりします。これは非常に低い確率で起こるものですが事前に把握することができません。当院ではこのアナフィラキシーショックをできるだけ見逃さないように接種後は待合室で休憩していただき、15分程で獣医師が体調を確認することで最大限の配慮を行っています。
軽度なタイプのアレルギー症状としては他に嘔吐や発熱がみられることもあります。命の危険に結びつくことは少ないですが、時に深刻な状態になることもあります。
ワクチン接種後は安静にし、ご家族の方が様子をよく見てあげてください。「これってワクチンアレルギーなのかな?」と不安に思われたらすぐに当院にご連絡ください。状況によっては点滴や注射、入院が必要になります。このような処置を想定し、ワクチンの接種はなるべく午前中でお願いしております。
過去にアレルギー歴がありワクチンは心配、でもこのままでは感染症も心配という不安をお持ちの方は当院にご相談ください。状況に応じて適切な方法をご提案いたします。

● 参考URL
WSAVA 犬と猫のワクチンガイドライン
https://wsava.org/wp-content/uploads/2020/01/Vaccination-Guidelines-2015-Japanese.pdf